2020年06月07日

“西洋近代美術にみる 神話の世界”展 










'20. 6. 6.   “西洋近代美術にみる
神話の世界”展   
会場:高知県立美術館



序章「古なるものへの憧れ」に続いて四章からなる標題の企画展示を観覧してきた。標題には「神話の世界」とあるが、想像上の古代風俗を描いた作品も含んでの展示なのだから、序章タイトルに示されているように「ギリシャ・ローマ時代への憧れ」展と題するほうが相応しいように感じたけれども、タイトルの訴求力から神話を前面に出したのかもしれないという気もした。どこの章だったか、第U章だと思うが、ニンフを描いた場合などは神話世界を描いたのか古代風俗を描いたのか判然としないといった解説がされていたが、ギリシャ・ローマ神話に描かれる神々の世界は、神話画と風俗画との区別がしにくい程に人間臭い物語世界であって、宗教絵画が描き出そうとするものとは自ずと異なってきているようには、展示作品の数々を観ていて確かに感じた。宗教絵画群には感じられない類の描き手の“憧れ”がいずれの作家たちの作品からも立ち上っていたように思う。



第T章「甘美なる夢の古代」で目を惹いた作品は、少年性を漂わせた女性が月桂冠と同色の緑色の服をまとっていて恰も“月桂樹の精”であるように描かれていた『月桂冠を編む』(フレデリック・レイトン
1872油彩)、神話の世界展なのに何故に風俗画なのだろうと最初に思わせてくれた『お気に入りの詩人』(ローレンス・アルマ=タデマ
1888油彩)と『世界の若かりし頃』(エドワード・ジョン・ポインター
1891
油彩)だった。チラシの表を飾っていた『お気に入りの詩人』では、窓から覗く建造物の輝きが何処か神話性を醸し出しているようにも感じられ、薄衣をまとった女性たちが金魚の泳ぐ室内池だか水浴室で戯れ、まどろむ『世界の若かりし頃』では、遊戯とまどろみの仄めかす現実世界からの遊離が神話世界に通じているように感じられて、とても気に入った。ジョン・ウィリアムス・ウォーターハウスの油彩画『フローラ』(1914頃)は、妙にぼんやりしていて、僕の内にあるウォーターハウスのイメージと違い、意表を突かれた。また、ここでは1階のコレクション展で先ごろ観覧した高知県立美術館所蔵のマックス・クリンガーの『オヴィディウスの変身譚の犠牲者の救済』が展示されていたので、1階ではどうしているのだろうと確かめてみたら、コレクション展では1882年版、ここでは1879年の初版を展示しているのだった。当館は、同じ作品の両方を所蔵しているのかと驚いた。



第U章「伝統から幻想へ」では、二つのリトグラフ作品が気に入った。アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンの原画による『ダナエ』(イアサント・オーブリー=ルコント
1824
)に惹かれ、オノレ・ドーミエ作品集の『古代史』のなかの『タンタロスの拷問』1842)が面白かった。ここでは、アングルの『ユピテルとテティス』1807-25頃油彩)も展示されていたのだが、第T章で展示されていた同じ画題のジョン・フラクスマンによる『アキレウスの名誉を救うようゼウスに懇願するテティス』1793ラインエングレービング)のほうが僕は好いように思ったので、チラシにはフラクスマンの作品図版のほうが掲載されていることに納得感が湧いた。



第V章「楽園の記憶」では、ラウル・デュフィの作品群に惹かれ、なかでも『ヴィーナスの誕生』1937油彩)が面白かった。今回の展示で僕にとって最も新鮮に感じられたのは、このラウル・デュフィの作品群だったように思う。また、ここでは高知県美所蔵のシャガール・コレクションのなかでも僕の好きな作品集『ダフニスとクロエ』1957-60リトグラフ)が展示されていて、改めてその色合いの鮮やかに観惚れた。




第W章「象徴と精神世界」で気に入ったのは、ジョルジオ・デ・キリコによるブロンズ作品『孤独な詩人』1970)とマッタによるエッチング、アクアチント作品『薄暗いアーチのある時間』1973)だった。各章に思いのほか数多くの著名作家による作品が展示されていて驚いたが、特に目を惹く作品でもなかったことが却って興味深く感じられた。















  ヤマ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/


   (『間借り人の映画日誌』)

http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/Live_bibouroku.html

   (『ヤマさんのライブ備忘録』)






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2020年05月20日

'20. 5.17. 「収集→保存 あつめてのこす」展 会場:高知県立美術館









'20. 5.17.   「収集→保存
あつめてのこす」展     
会場:高知県立美術館



館蔵品からの展示として「収集
みんなのコレクション」と「保存
過去と未来の中継地であるために」の二つに分けて「展観することで、…これまでの作品収集にまつわる歩みを可視化すると共に、作品をいかにして次世代へと残し伝えていくかという課題にも向き合おうとするものだ」(頒布リーフレットP3)という展覧会を観覧してきた。契機は、耐震化工事に伴う休館中の収蔵作品の調査及び整理作業だったようだが、公立館として負っているもののなかで、美術館というものの存在証明に直結する問題に館として改めて向き合った結果を提示するのは、職員にとっても県民にとっても、非常に有意義な好企画だと思った。



3つのカテゴリー“1
新たなコレクション”“2 めぐりめぐってこの場所へ”“3
コレクション・ハイライト 1980-90’s”からなる「収集」では、三年前に亡くなった高崎元尚<http://www.tosakpc.net/main1-9.html#p0159 >『装置66-6'66]ほかの作品及び資料15点が目を惹いた。全て奥様からの寄贈によるもので、資料などは初めて観るものばかりだったが、作品自体は馴染みのあるものだし、作家との交流が僕自身にもあったので、高知県立美術館のこれまでを総括するような企画展に大きく取り上げられていたことが、タイミング的なものがあったにしても大いに嬉しく感じられた。



しかし、“1
新たなコレクション”に展示されていたものが全て寄贈品ばかりであることが少々気になったところ、収集における経年状況がグラフと共に示されていて驚いた。僕が在職していた'93年の開館時、作品収集については1億円の文化基金で対応することになっていて、収集すべき作品を購入した後は、予算化して積み増し補填するのがルールだった覚えがある。ところが、2005年以降、県による購入は一切なくなっているとのことで、その後、わずかに購入した作品は、運営経費をやりくりして捻出した作品収集費外の資金によるものとのこと。現在の文化基金がどうなっているのかと、公表されている高知県の平成30年度の基金運用状況審査意見書にあたってみたら、基金総額は38億8千8百万円だが、絵画等に形を変えていない定期預金等は814,000円しか残っていない。確かに、これでは作品収集に充てることはできないだろう。“3
コレクション・ハイライト 1980-90’s”には、現在の評価額だと、仮に作品収集費が手当てされていたとしても到底購入できそうにないジャン=ミシェル・バスキアやゲルハルト・リヒターの作品が展示されていた。リーフレットの記載によれば、バスキアの『フーイー』'82]の昨年の貸出輸送に際して提示された保険評価額が約13億円だったそうだ。保険評価額でさえ購入額の約43倍になっているわけだ。



そのほか、“3
コレクション・ハイライト 1980-90’s”に展示されていた『黒いスープ』'84]に穴が開いていることに初めて気づいたり、『ヒストリカル・ランドスケイプ』'93]を久しぶりに観て、この作品自体はさほどでもないながら、福田美蘭が好きだったことを思い出したり、“2
めぐりめぐってこの場所へ”にあった篠原有司男の『空海現る』'95]とアート電車制作風景の写真スライドを観ながら、レッド・グルームスによる最初のアート電車の制作を学芸員から持ち掛けられ、降って湧いた話で予算化されていないなか、どうやって実現させるか難儀したことなどを懐かしく思い出したりした。最初に話があったとき「それは面白い、何とかしたいね。」と言ったら、「予算計上されてないのに、事務の方に最初にそう言ってもらえて凄く嬉しいです。」と相好を崩した学芸員も今は在籍しておらず、僕がいた開館時の6人の学芸員で現在残っているのは、今の学芸課長1人だけになっている。



続く「保存」もまた、3つのカテゴリー“4
忘れえぬこと”“5 作品は何でできている?”“6
アーティスト・インタビュー”によって構成されていた。最初の“4 忘れえぬこと”では、'98年の豪雨災害で1階が水没した際に被災した108点のなかから、4点の油彩画が展示されていたが、被災写真との対照のなかで、その凄い修復技術に恐れ入った。それゆえにこそ、修復の手はどこまで施すべきものかを問う提起は、作品が作品として負うべき歴史の痕跡と外観の問題及び作者の意図しない人の手の介入の問題について観賞者に考える機会を与えるものになっていたように思う。'98年豪雨の被災時には作品外の備品についての台帳も散逸したとのことで、開館当時の調達業務を直接的に担った職員としてその再現と確認に駆り出された覚えがある。



次の“5
作品は何でできている?”に展示されていたアンゼルム・キーファーの『アタノール』'88-91]は、平成5年の開館記念展で正延正俊の『作品 65.2』と並び、僕の目を一際惹いたお気に入りの作品だ。表面をバーナーで焼いたような作品には当初から焼け焦げて破損している部分が随所にあって、この状態で何年も持ち堪えることができるのだろうかと懸念したが、四半世紀を過ぎた今観ても、当時心配したような変容には見舞われておらず、その保存に感心した。確か幾度か貸し出しにも応えたように記憶しているが、キーファーは「
自分の作品は、外観は大変デリケートで脆そうに見えるかもしれないが、実は非常に耐久性がある」(頒布リーフレットP17)と言っていたそうだ。



美術館のエントランス正面の階段に掛けられているフランク・ステラの『ピークォド号、薔薇蕾号に遭う』['90]は、美術館ホールのホワイエに架けてあるニコラ・デ・マリアの『グロリア』['88]ともども開館時にどこに据えるか場所に難儀した作品だが、他の場所に置き換えようもなく四半世紀も居続けるなかで、両作ともそれぞれの場所をシンボライズする県立美術館の顔と言える作品になっているように思う。だが、出しっ放しにされているがゆえに汚れや埃の溜まりようが激しく、とりわけ立体作品である『ピークォド号、薔薇蕾号に遭う』は接合部の劣化もあって修復を要したとのことで、その修復・組立作業を記録した映像が展示されていて目を惹いた。



最後の“6
アーティスト・インタビュー”に設えられていた『モリクラ・マシーン』'98]の森村泰昌インタビュー映像と『ヒノマル・イルミネーション』'92]の柳幸典インタビュー映像は、本展の企画趣旨に適ったなかなか興味深いものだった。


 これまで開催されてきた展覧会のなかでも好企画の上位に来る展示だったように思われるだけに新型コロナ禍によって本来の会期の大半が休館になってしまったことがとても残念だった。









  ヤマ

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2020年01月31日

金川信江 ドバイの写真展に参加

NEW JAPAN PHOTO 10
LAUNCH EXHIBITION
AT CHI-KA(DUBAI)
JAN 24 - FEB 22, 2020


〜 写真と出会った音楽家 〜 金川信江の写真活動です。

2010年「日本の写真家を世界へ」をスローガンに、
海外に向けて写真家のプロモーションや出版を行う団体として
設立された EINSTEIN STUDIO 。
金川は、これまでにも刻一刻と変化していく大都市「東京」の
姿を記録する参加型ドキュメンタリー写真集「TOKYO / JAPAN」
への掲載を通じて展示にも参加して来ました。
この度は、EINSTEIN STUDIOが発行する若手写真家カタログ
「NEW JAPAN PHOTO 10」へ作品4点を掲載紹介されています。
時代性を感じさせる日本の写真家の作品を、
世界のアートファンと繋げるプロジェクトとして展開される
この本の出版記念展覧会が、
ドバイにあるオルタナティブスペース“CHI-KA”で開催されています。
この会場は、アラブ首長国連邦が現代美術シーンの活性化を
目的とし、500,000平方フィートに広がる敷地に、
ギャラリースペース、デザインスタジオ、レジデンスプログラム、
映画館、屋外イベント施設、ユニークな飲食店などを有する、
世界にも類を見ない大規模なアートスポット Alserkal Avenue の
中にあります。
QUOZ ARTS FEST が開催されるタイミングに合わせて
1月24日にスタートいたしました。2月22日まで開催しています。


詳細は下記リンクをご覧ください。
https://cdf-music.com/cl/Schedule/entori/2020/1/24_yagirintorioriberutada_qian_hui_zi_2.html


そして、このタイミングでドバイに行かれるご予定の方、
是非会場までお運びください。



主催:EINSTEIN STUDIO https://www.einstein-studio.com

会場:CHI-KA https://www.chikaspace.com


.


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2019年09月27日

出射茂作品展「線の彼方へ」



来たる928()から106()までの会期で



「出射茂作品展   線の彼方へ」



と題しました個展を銀座NICHE GALLERYにて開催する運びとなりました。



 



点と線と面で思考する自分の語彙の中でも、今回は「線」にウエイトを置き、DRAGONの細密線から人物のクロッキーの線まで・・



今、私にどんな線がひけるのか・というその事を確かめる作品群でもあります。



ご高覧、よろしくお願い申し上げます。






なお、29()16:30お越し頂ける皆様と



作品の秘密を探る?懇談も兼ね、



素敵なお茶とワインのレセプションを開催します。




出射茂作品展「線の彼方へ」



2019928()106日(日)11:0018:30



オープニングレセプション:929日(日)16:3018:30



会場:銀座、ニッチギャラリー



東京都中央区銀座3-3-12、銀座ビルディング3F






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2019年08月25日

写真展 Tokyo / Japan Archives Exhibition



Tokyo / Japan Archives Exhibition 
at HOTEL THE KNOT TOKYO Shinjuku

 

EINSTEIN STUDIO が企画発行してきた写真集、
どこにも似ていないこの都市を、誰とも似てないあなたの視点で切り取り、
一冊の本にしてきた TOKYO / JAPAN ISSUE.43 でファイナルを迎えます。
この最終号を記念したアーカイブ展を 
HOTEL THE KNOT TOKYO Shinjuku にて開催いたします。


会期:2019824 1030日 9:0023:00

829日木曜日に限り、THE KNOT リニューアルオープン1周年のイベントの為、
インビテーションカードをお持ちの方のみ入場可能となります。ご注意ください。
その他の日程は、いつでもご覧頂けます。

作品展示に加え、829日より10月末まで、スライドショーの上映も行われます。


会場:HOTEL THE KNOT TOKYO Shinjuku 2階 ラウンジ

    東京都新宿区西新宿4-31-1

   

   地下鉄大江戸線 都庁前駅A5番出口より徒歩4
   JR新宿駅 西口より徒歩14
   地下鉄丸ノ内線 西新宿駅2番出口より徒歩12


企画:EINSTEIN STUDIO  https://www.einstein-studio.com


 


 昨年8月にリノベーションオープンしたこのデザインホテルは、
ロビー・ラウンジの奥まで、レストランの中にも随所にアート作品が飾られ、
独特の雰囲気で魅力的です。新宿中央公園の脇に位置しています。



これまでの43冊の写真集に掲載された作品からの展示です。
投稿者、音楽プロジェクトc.d.f(セーデーエフ)の、
音楽家×写真家 金川信江は、
Issue.33 (JUL.2018) に掲載された作品1点を展示して頂きます。


投稿:音楽プロジェクトc.d.f(セーデーエフ)
    サイト内情報ページ




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2019年04月07日

クリスチャン・ボルタンスキー[Lifetime]  会場:国立国際美術館









'19. 3.24.  クリスチャン・ボルタンスキー[Lifetime 



                      会場:国立国際美術館



 同日に開催されていた第17回中之島映像劇場“回想の岩佐寿弥”もそうだったが、実に刺激的で、触発されるものがたくさんあり、提示される個々の作品を越えた部分での作家性というものが作品全体を通して浮かび上がってくるように感じられる展示だった。



 入口の青い電光掲示作品Cat.38『出発(DEPART)』から出口の赤い電光掲示作品Cat.39『到着(ARRIVEE)』に至るまでの[Lifetime]を過ごしながら、通常の展覧会観覧とは異なる体験感覚を味わった。入室早々に配置されていたCat.1『咳をする男』が実に強烈で、吐血しながら座して痙攣している男の白く腫れあがった顔面の虚ろな表情の醸し出す苦悶が、隣室に掲示されたCat.30『心臓音』の刻む大音量の鼓動と相俟って観ている者を戦慄させる展示になっていた。一緒に観覧した友人は、その監禁拘束されているようにも見える風情からか、拷問虐待を想起したようで、壁に掛けてあったヘッドフォンを耳に充てると聞こえてくる咳込みの音に怯んでいた。心臓音の間を通り抜ける紐簾のカーテンには人物の顔が大きく投影されている(Cat.34『合間に』)のだが、とにかく随所に夥しい数の老若男女の写真が掲示されていて、総じて暗い展示室に意味ありげな光の明滅が揺らぎの視覚化として提示されるものだから、自ずと人の命を思わせるとともに、大量の色とりどりの衣服の集積(Cat.20『保存室(カナダ)』)が提示されたり、Cat.21『死んだスイス人の資料』Cat.22174人の死んだスイス人』が展示されていると、たとえカナダ、スイスといった断り書きがあったとしても、やはりアウシュビッツなどの収容所を想起せずにはいられなくなる。



おまけに一際あかるく大きく広がった空間の3面スクリーン(Cat.44『ミステリオス』)で映し出された恐竜とも鯨とも知れない巨大な骨格の映像と共に断末魔のような叫びが聞こえてきているのだから、なおのこと苦しい想いが湧いてくる。加えて僕らは、出口近くに配されていた死の天使の影を映し出すCat.6『影(天使)』Cat.7『影』、あるいは「来世」の文字が電光掲示されるCat.47『黒いモニュメント、来世』を先に観ていたものだから、自ずとそうならざるを得なかった。でも、自身の観賞体験としては、結果的にそのことが効果的に働いたように感じている。Cat.8からCat.14にかけての一連の『モニュメント』と名付けられた作品を配置した居室の醸し出す“鎮魂の間”とも言えるような神聖な空気に触れる気持ちになった。



そして、今回の展示でも最も心打たれたCat.42,43『アニミタス』を前に座し、暫くの時間を過ごすなかで得も言われぬ感情体験を果たしたように思う。とりわけCat.42『アニミタス(チリ)』では、展示作品目録の解説に記されている「ボルタンスキーが生まれた日の夜の星座の再現」とは異なる意味を受け取った。草しか生えない砂漠に突き立てられた細長い棒に取り付けた風鈴とそこにぶら下がる御札のようにも見える白い紙がたなびく様子を映し出した映像と透明感のある音色で鳴っている風鈴の響きが慰霊のイメージを想起させ、一緒に観賞した友人が奇しくも語っていたように、数多ある風鈴の一つ一つが夥しい数の写真によって示されていた名もなき人々の想起させる“犠牲者の魂”と重なって見えてきたのだった。



実際、これをもって星座の再現だとボルタンスキー本人から言われても承服しがたいような確かなイメージとして映って来たし、2つのスクリーンの裏側になる隣室に、今度は色とりどりではなく黒一色のコートをうず高く積み上げたCat.41『ぼた山』を配置し、傍に近寄ると日本語や英語で「それは突然に来たのか」とか「そのときはどうだったのか」と黒いコートの彼岸の番人たちが問い掛けてくるCat.32『発言する』をその『ぼた山』の周囲に配してあるのだから、紛れもないことのように思われた。そうしてから入口に戻り、広い前室スペースに置いてあったVTRで、単なる鑑賞ガイダンスに留まらない長尺のアート・ドキュメンタリーを2作品観賞していたら、案の定、『ショア』への言及があり、ユダヤ教の聖職者ラビと仏教の禅師との間のような存在についての言及があったりして、大いに得心したのだった。



ボルタンスキーは、キリスト教徒の母とユダヤ教徒の父の間に生まれたようだが、祖母が日本人であるような発言もあったりして、相当に複雑な家庭環境にはあったようだ。さすれば、自身が何者であるのかというアイデンティティ問題は、生涯の課題なのだろう。己が生の時間を秒数で示し続けるカウンターを作家蔵のCat.37『最後の時』として展示していたLifetimeの濃密な時間の一部を体感させてもらった手応えがずっしりと残った。友人の提案により最後に再び入室して、最も気に入ったCat.42『アニミタス(チリ)』の前に座してみると、時間の経過によって映し出される景色が昼の時間帯になっていたのか、めっきり画面が明るくなっていて感動を覚えた。加えてもう一つ、とても気に入った作品であるCat.45『黄金の海』を改めて観覧してから退出した。





昼食後、B1F講堂で岩佐監督の映画作品『眠れ蜜』を観てから、本展に合わせて企画されたコレクション展“見えないもののイメージ”を観覧した。「T.死者へ/U.作者へ/V.天空に/」との構成で展示された作品群は、自ずと死や苦のイメージを誘うものが散見されるものとなっていた。友人の眼は余り惹かなかったらしく不満気だったが、僕にはいくつか興味深い作品があった。



やはり「T.死者へ」にあった作品が多く、マーク・クインによる立体作品『美女と野獣』の素材感が目を惹き、アンゼルム・キーファーの『星空』が僕のなかにある作家イメージを更新してくれる新鮮さを与えてくれた。また、高知県美でも見覚えのある本県にゆかりのある塩田千春の作品が5点(『私の死はまだ見たことがない』、『トライ
アンド ゴーホーム』、『眠っている間に』×2、『トラウマ/日常』
)も展示されていたことや、病的にも映る工藤哲巳の作品群(『水槽の中のあなたの肖像』、『危機の中の芸術家の肖像』、『遺伝染色体の雨の中で啓示を待つ』、『人間とトランジスタの共生』)が目を惹いた。


「U.作者へ」では、吉田克朗の「触」シリーズ2点(『触“体-63”』、『触“体-65”』)。「V.天空に」では、日高理恵子の岩絵具による『葉光(ドローイング)』『樹を見上げてX(ドローイング)』が気に入り、イリヤ・カバコフによる『天使と出会う方法』の天使の大きさが妙に気に掛かった。








  ヤマ

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2019年04月02日

『時は春 brilliant color exhibition 』写真展


文京区千駄木 ギャラリーKINGYO で開催される、
 自由テーマによる写真グループ展です。

会期:4月9日火曜日〜4月14日日曜日 12:00〜19:00 最終日17:00迄 


展覧会のタイトルの『時は春』は、
ロバート・ブラウニングの詩「春の朝」よりとりました。

「春の朝」

 時は春、
 日は朝、
 朝は七時、
 片岡に露みちて、
 揚雲雀なのりいで、
 蝸牛枝に這ひ、
 神、そらに知ろしめす。
 すべて世は事も無し。



出展作家:安達 洋子・穴吹 有希・安藤 智仁・入野 陽子
     金川 信江・新家 加奈・田口 沙織
     つゆき ようすけ・花輪 奈穂・原 憲太郎
     服部 知佳・宮崎 慎之輔・森 英夫・山内 万智子


アート写真の展示・販売、ポートフォリオの展示を致します。


近隣の根津神社のつつじが美しく、谷根千の散策にもちょうどよい頃です。
どうぞ展覧会にもお立ち寄ください。


会場:Gallery KINGYO http://www.gallerykingyo.com/
   文京区千駄木2-49-10 tel 050-7573-7890 
   千代田線 根津駅・千駄木駅 両駅から徒歩7分



投稿:音楽プロジェクトc.d.f(セーデーエフ)
    サイト内情報ページ
https://cdf-music.com/cl/Schedule/entori/2019/4/9_xie_zhengurupu_zhan_shiha_chunbrilliant_colorexhibition.html




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2018年10月26日

東京都美術館 「見る、知る、感じる──現代の書」 プレスリリース・報道内覧会のご案内

芸術応援サイト「アーツカレンダー」 ご担当者様

拝啓 時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

この度、東京都美術館(上野)では2018年11月18日(日)〜2019年1月6日(日)まで、
上野アーティストプロジェクト2018「見る、知る、感じる──現代の書」を開催する運びとなりました。
「公募展のふるさと」と称される東京都美術館の歴史の継承と未来への発展を図るために、
2017年より開始したシリーズ「上野アーティストプロジェクト」の第二弾として、
書の公募団体に現在所属する6名の作家を紹介し、その魅力を発信いたします。
今回のテーマは「書の鑑賞」。初めて現代の書を見る方でもお楽しみいただけるように、
現代の書ならではの表現を、作家の言葉を手掛かりにご覧いただきます。
鑑賞体験を通して、今日の書とは一体どのような表現なのかについて、見て、知って、感じていただきながら、
初心者も熟練の方も、皆さまを奥深い書の世界へと誘います。

※下記Youtubeにて制作風景やインタビュー映像を公開中です!
(現時点では作家2名のご紹介ですが、今後続々と参加作家をご紹介予定です)
http://clk.nxlk.jp/MGt3tjkf

つきましては、下記にてプレスリリースをお送りいたしますので、
ご一読のうえご紹介をご検討頂けますと幸いです。
有効期限:2018/11/25(日) 15:00
添付ファイル(UAP書 開催プレスリリース.pdf)
http://clk.nxlk.jp/NcIkCCSI

また、下記日程で報道内覧会を開催いたしますので、
お目通しのうえ、ぜひご出席賜りますようお願い申し上げます。
■日 時:2018年11月17日(土)15:00〜16:30[受付 14:50〜]
■会 場:東京都美術館 ギャラリーA・C(東京都台東区上野公園8-36)
*17:00〜開会式、一般招待者向けの内覧会・レセプションを開催いたします。
ご案内状をDLのうえ、ご確認をお願いたします。
有効期限:2018/11/25(日) 15:00
添付ファイル(UAP書 報道内覧会リリース.pdf)
http://clk.nxlk.jp/DeJCktTV

ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。


《展覧会に関するお問い合わせ》
東京都美術館 広報担当 
TEL 03-3823-6921 FAX 03-3823-6920 E-mail:press@tobikan.jp

《配信に関するお問い合わせ》
株式会社 ユース・プラニング センター 岩川
TEL:03-3406-3411 FAX:03-3499-0958 Email: s-iwakawa@ypcpr.com
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2018年03月15日

今夏、都美で開催決定!!【BENTO おべんとう展】報道発表会のご案内

芸術応援サイト「アーツカレンダー」様

謹啓 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

この夏、東京都美術館では、企画展「BENTO おべんとう展−食べる、集う、つながるデザイン」(会期:2018年7月21日(土)〜10月8日(月・祝))を開催いたします。

本展は、日本独自の食文化であり、人と人をつなぐ「おべんとう」をコミュニケーション・デザインの視点からとらえ、その魅力を来場者自身が体験しながら発見できる空間を作ります。会場は、「おべんとう」から見えてくるコミュニケーション・デザインをテーマに、遊び心のある江戸時代のユニークなデザインのお弁当箱や、現代の作家たちのインスタレーション、参加型の作品などを展示します。
つきましては、本展出品作家をお招きして、記者発表会を開催いたします。 “奇跡のお弁当”と呼ばれる山本千織による特製「BENTO展べんとう」もご用意しておりますので、万障お繰り合わせの上、ご出席賜りますようご案内申し上げます。

【企画展「BENTO おべんとう展−食べる、集う、つながるデザイン」 報道発表会】
日時:2018年3月23日(金)18:00〜19:30(開場・受付 17:45〜)
会場:東京都美術館 交流棟2階 アートスタディルーム

当日は、おべんとうのワークショップもございます。
下記にて、ご案内状をお送りさせて頂きます。

有効期限:2018/04/14(土) 12:03
添付ファイル(【おべんとう展】報道発表会のご案内.pdf)
http://clk.nxlk.jp/xZWEfxZ3

ご査収の程、宜しく御願い申し上げます。

+--------------------------------------------------------------------+
PR局 岩川さやか Sayaka Iwakawa
株式会社 ユース・プラニング センター
〒150-8551 東京都渋谷区渋谷1-3-9 ヒューリック渋谷一丁目ビル3F
TEL:03-3406-3411 FAX:03-3499-0958
Email: s-iwakawa@ypcpr.com
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2018年02月08日

[イベント情報掲載依頼] 2/21(水) 開催 公開講座「技術を深める(第4回)」

180221_掲示板_掲載依頼情報0202_yonezu.docx
gijyutsu.jpgご担当者さま

平素より大変お世話になっております。

TARLにて開催いたします公開講座のお知らせをぜひ御サイトにてご掲載いただきたくご連絡差し上げます。

2/21(水)開催 「技術を深める(第4回)」の参加申し込み募集を開始いたしました。

・開催情報
添付いたしますので、添付内容をご確認ください。

・添付画像
添付いたしますので、添付内容をご確認ください。

お忙しいところ恐縮ですが、ご興味お持ちいただけましたら幸いです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

TARL事務局(一般社団法人ノマドプロダクション)
脇屋佐起子
posted by アーツワークス at 17:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術系

2018年01月22日

[イベント情報掲載依頼] 2/7(水) 開催 公開講座「技術を深める(第3回)」

掲示板_180111掲載依頼情報.docx
gijyutsu.jpgアーツカレンダー
ご担当者さま

平素より大変お世話になっております。

TARLにて開催いたします公開講座のお知らせをぜひ御サイトにてご掲載いただきたくご連絡差し上げます。

2/7(水)開催 「「技術を深める(第3回)」の参加申し込み募集を開始いたしました。

・開催情報
添付いたしますので、添付内容をご確認ください。

・添付画像
添付いたしますので、添付内容をご確認ください。

お忙しいところ恐縮ですが、ご興味お持ちいただけましたら幸いです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

TARL事務局(一般社団法人ノマドプロダクション)
脇屋佐起子
posted by アーツワークス at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術系

2018年01月12日

[イベント情報掲載依頼] 2/7(水) 開催 公開講座「技術を深める(第3回)」

アーツカレンダー
ご担当者さま

 平素より大変お世話になっております。

 TARLにて開催いたします公開講座のお知らせをぜひ御サイトにてご掲載いただきたくご連絡差し上げます。

 2/7()開催 「技術を深める(3)」の参加申し込み募集を開始いたしました。

 

・開催情報

以下リンクよりダウンロードをお願いいたします。

http://firestorage.jp/download/9252747e3d4011061a2ea7e3ae76aa472fb54d9b

 

・添付画像

以下リンクよりダウンロードをお願いいたします。

http://firestorage.jp/download/a24dbedb74210900e50dd97f8a3853b44c6223e2

 

お忙しいところ恐縮ですが、ご興味お持ちいただけましたら幸いです。

 何卒よろしくお願い申し上げます。

 

TARL事務局(一般社団法人ノマドプロダクション)

脇屋佐起子



posted by アーツワークス at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術系

2017年09月28日

10/12(木)開催!「アートプロジェクトの今を共有する」

artproject.jpg170926_掲示板投稿用原稿.docx
アーツカレンダー
ご担当者さま









平素より大変お世話になっております。


TARLにて開催いたします公開講座のお知らせをぜひ御サイトにてご掲載いただきたくご連絡差し上げます。


10/12(木)開催 「アートプロジェクトの今を共有する」第2回の参加申し込み募集を開始いたしました。


情報を添付いたします。


お忙しいところ恐縮ですが、ご興味お持ちいただけましたら幸いです。


何卒よろしくお願い申し上げます。

TARL事務局(一般社団法人ノマドプロダクション)
脇屋佐起子


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TARL事務局/一般社団法人ノマドプロダクション
E-mail:info@tarl.jp
Tel:080-3171-9724


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