2018年11月25日

四十年ぶりの早稲田松竹









ウディ・アレン×トッド・ヘインズ“作家たちが描くニューヨークとその時代”

 『女と男の観覧車』(Wonder Wheel)  監督 ウディ・アレン 

 『ワンダーストラック』(Wonderstruck) 監督 トッド・ヘインズ 




 

 僕が早稲田松竹で最初に観た映画は、大学に入った年の4月の『ベニスに死す』と『愛すれど哀しく』の二本立てで、手元の記録によれば、最後は'79年の『タクシードライバー』と『狼たちの午後』だから、ざっと四十年ぶりということになる。僕の記憶では、かつての入り口は今とは反対の大学寄りの向かって左側だったような気がするが、すっかり綺麗になって席数も僕の覚えよりは多くなっているように感じた。




 今回の“二つのワンダー”とも言うべきラインナップのうち、先に観た『女と男の観覧車』では、甘く流れる♪ブルーレディに紅いバラ♪が何とも哀しく響いてきた。自身の不倫による家庭の破綻で女優業も続けられなくなり、同じく人生に躓いた酒癖の悪い男と子連れ再婚をして、しがない女給業で食い繋いでいるブルーレディ、ジニー(ケイト・ウィンスレット)に贈ってやれる赤いバラなどありそうにない気がしてきて、哀れを誘われたのだろう。




 決して悪い女じゃないのだけれど、やっぱりダメな女で、幸せには縁遠いキャラクターなのだと思う。単に恋情にのぼせ上ってのこととは言えないものがあって、ミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)ならずとも、いずれ愛想尽かしをされてしまうことが想像に難くない哀れな女性だった。そういう意味では、夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)はまたとない腐れ縁的な格好の相手なのだが、「嫌じゃないけど満足できない」というのがミソだと思った。




 ジニーがモンローばりのドレスをきれいさっぱり捨てられるようになれば、また違う人生が開けてくるのかもしれないが、むしろ無理やりにでも身にまとわずにはいられない姿が何とも痛ましかった。




 十年近く前に拙日誌も綴ってある『愛を読むひと』を観たときにも思ったが、ケイト・ウィンスレットは大した女優になったものだとつくづく感心した。若いミッキーを惹きつける年増の魅力も、ミッキーもハンプティもうんざりさせてしまう煩さもともに生々しく体現していたように思う。







 続けて観た『ワンダーストラック』では、始まる前に文科省選定との文字が映し出され、トッド・ヘインズが選定映画を撮るようになったのかと驚いたが、ありがちな選定映画とは一味違う快作だった。




 埋もれていた記録と記憶がある種の意思が働いたとしか思えない不思議な繋がり方をして立ち現われてくる姿を観ながら、ヴァーチャルではない“モノ”の大切さを改めて思った。不慮の事故で亡くなったエレイン(ミッシェル・ウィリアムズ)が息子のベン(オークス・フェグリー)に遺した想いと遺品の紡ぎ出す物語の鍵を握っているのが、今どき如何にも時代遅れ感の漂う本とジオラマであるところがいい。かつて模型作りに耽ったり本屋巡りを重ねたりしたことのある者には堪らない味わいを残してくれる作品だ。人はイメージだけでは継いでいけないからこそ博物館があるのだと改めて思った。




 今なお早稲田松竹が、かような二本立てを続けてくれているのが何とも嬉しくなった。今回、四十年ぶりに大学祭に来るのみならず早稲田松竹で二本立てを観るのも目的の一つだと、前々日に映画と展覧会に付き合ってもらった友人に話したら、一番印象に残っている映画は?と問われ、『ミッドナイトエクスプレス』と『ひまわり』だと答えたが、思い返してみると、『カサブランカ』も『アマルコルド』も『太陽がいっぱい』も『ウッドストック』も、ここで見せてもらったのだった。




 映画が終わって、すっかり遅くなった昼食には、前日の早稲田祭に赴いた中高大の同窓生と今なお当時と同じ場所で営業していると確認した「えぞ菊」で懐かしのコーン盛の味噌ラーメンを食べた。当時、朝までやっている店がまだ少なかったなか、明け方近くまで麻雀に耽った後、よく食べに来たものだった。今ではラーメンにコーンを盛るのは珍しくもなんともないトッピングだが、当時の僕には珍しくてさすがはサッポロラーメンだと感心した覚えがある。太麺に少し甘みも感じる味噌味が好みで、よく食したものだが、最後に飲み干すスープに残っているコーンと挽肉の粒を噛み潰しながら、遠い昔を思い出した。僕の記憶では、店内はカウンターが馬蹄形に囲ってあったのだが、そうはなっていなかったので訊ねると、昔と全く同じ場所ではなく、少し移動して店構えが変わっているのだそうだ。午前5時までやっていた営業時間も1時間短くなって、午前4時までになっていた。僕と同じように昔懐かしく入ってくる客がいるのか訊ねると、けっこうおいでますとのことだった。むろん僕が通っていた当時の顔ではなかったので、いつからか問うと十八年になるとのことだった。ちょうど真ん中あたりだねと言うと、そんなに前ですかと笑って、また来てくださいねと言われた。ちと遠いけどなぁ。

 

'18.11. 5. 早稲田松竹 


















  ヤマ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/


          (『間借り人の映画日誌』)

http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/Live_bibouroku.html

          (『ヤマさんのライブ備忘録』)





posted by アーツワークス at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・映像系
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