2018年08月14日

「緑のテーブル2017」プレスリリース第4弾[2018.9.5-6開催]

アーツカレンダー 様

 

平素より大変お世話になっております。

 

本年4月の名古屋公演の映像を使用した新トレーラーが完成しました!ぜひご覧ください。

>> 「緑のテーブル2017」トレーラー https://vimeo.com/283234463

 



「戦争に反対したダンス」があった一方で、「戦争に巻き込まれたダンス」もありました。

本リリースでは、時代の波に翻弄された日本モダンダンスの歴史に焦点をあてます。

 

ニュース・トピック==========================

1. 慰問舞踊とプロパガンダ

2. 大野一雄と戦争

3. 大野一雄舞踏研究所からの出演者決定!

4. 公演基本情報

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1. 従軍慰問とプロパガンダ

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従軍舞踊団記録写真



日中戦争下の日本において、モダンダンスもプロパガンダの手段として国家に利用されました。

その典型例が、従軍慰問公演です。1938年頃から1942年頃まで、陸軍省の依頼、新聞社の後援など様々な形で皇軍慰問が行われます。その目的は、前線の士気を鼓舞するとともに、戦地で見聞したことを帰国後に宣伝させることにありました。

日本軍事政権がダンスを政治利用した背景には、同盟関係にあったドイツからの影響があると考えられます。ナチス政権下のドイツでもまた、モダンダンスはナショナリズムを高める一手段として体制側に利用されていました。たとえば1936年のベルリン・オリンピックでは、ルドルフ・ラバンやマリー・ヴィグマンが開会式の振付演出を担当するほか、元ダンサーのリーフェンシュタールが記録映画『オリンピア』を撮影しています。

ドイツのヴィグマン舞踊学校で学んだ江口隆哉と宮操子は、1938年帝国劇場で舞踊作品「麦と兵隊」(火野葦平原作)を発表した後、戦地慰問の旅に出ました。1942年まで4回にわたり、中国、東南アジアの最前線を訪れ公演しています。故宮操子の手元に戦地での貴重な写真が残されていました。その一部をこちらからご覧下さい。



>> 江口隆哉・宮操子従軍慰問舞踊団 https://youtu.be/HeF5Bn0NywU [限定公開]

 ※こちらの映像URLに関しましては、SNS等での公開や転送などをお控えいただきますようお願い申し上げます

 

[参考図書]

- 坂口勝彦、西田留美可『戦場のモダンダンス 江口隆哉・宮操子前線舞踊慰問の軌跡』NPO法人ダンスアーカイヴ構想、2017年。

- 宮操子『陸軍省派遣極秘従軍舞踊団』創栄出版、1995年。

- 宮操子『戦野に舞ふ 前戦舞踊慰問行』鱒書房、1942年。

 

 

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2. 大野一雄と戦争

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大野一雄写真



江口・宮のもとでモダンダンスを学んでいた大野一雄は、1938年に出征により舞踊活動を中断。開封(中国西北部)で7年、戦争の末期はニューギニアに移ります。終戦後は連合軍の捕虜になり、1年を過ごしたのち、ようやく1946年に足かけ9年の従軍から生還します。帰宅翌日から江口・宮舞踊研究所での稽古を再開し、1949年に最初のリサイタルを持ちました。

ニューギニアから帰る船上で亡くなった戦友達を水葬して見送った体験から、帰国したら「クラゲの踊り」を踊って死者の霊を慰めようと思ったと、大野一雄は語っています。

戦争の悲惨さを身をもって知り、舞踏とは「命を大切にすること」と言っていた大野。彼は、江口・宮からクルト・ヨース「緑のテーブル」の話を聞いたとみられ、大きな感動をもってこの作品を受けとめていました。

 

 

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3. 大野一雄舞踊研究所からの出演者決定!

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「緑のテーブル2017」東京公演には、4名の大野一雄舞踏研究所研究生が出演します。

久世龍五郎、目次立樹、宇賀神智、友井亮輔

 

 

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4. 公演基本情報


岡登志子振付「緑のテーブル2017」(2017年神戸初演)

http://www.dance-archive.net/jp/news/news_12.html

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 [日時]2018年9月5日(水) 20:00開演

         9月6日(木) 20:00開演  (※上演時間:約60分)

 

[会場]ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター

 

[料金]前売 一般 3,000円 | 学生 2,500円 | 団体割引(5名) 12,000円

    当日 一般・学生とも 3,500円

 

    チケットカンフェティ

    http://confetti-web.com/greentable2017

    Tel: 0120-240-540(通話料無料・平日のみ10:00-18:00)

    ※発券手数料はダンスアーカイヴ構想が負担します。

 

[キャスト/スタッフ]

 振  付:岡登志子  

 美  術:廣中薫

 出  演:垣尾優、桑野聖子、糸瀬公二、文山絵真、佐藤健大郎、山井絵里奈、

      村田圭介、佐伯春樺、奥響子、岡登志子、

      大野一雄舞踏研究所研究生(久世龍五郎、目次立樹、宇賀神智、友井亮輔)

 特別出演:大野慶人

 音楽協力:田村ゆう子

 

 主  催:NPO法人ダンスアーカイヴ構想

 共  催:有限会社かんた

 特別協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター

 協  力:大野一雄舞踏研究所、アンサンブル・ゾネ

 助  成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)

 

 

本件についてのお問い合せ、写真等のご請求は下記にご連絡ください。

何卒よろしくお願い申し上げます。



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NPO法人ダンスアーカイヴ構想(担当:溝端)

http://www.dance-archive.net

Email : press@dance-archive.net

Facebook : @DanceArchiveNetwork

Twitter : @dance_archive

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※今後ダンスアーカイヴ構想からのプレス配信がご不要な方は、本メールにそのままご返信ください。

 
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2018年08月10日

'18. 8. 5. タネマキカク第1回公演『「…」』









'18. 8. 5. タネマキカク第1回公演『「…」』

会場:蛸蔵


 もう何年も打っていない気がするが、ひと頃は毎日のように囲碁に興じていたから、久しぶりに碁盤に高らかな石音を立ててみたくなった。高知公演に寄せて脚本家【久野那美(Fの階)】が「囲碁劇を作ろうと思いました」と記しているように、利き石が重荷になったり、死に石が甦ったり、手順を重ねることで局面が変わり、同じ場所に置かれたままの石の持つ意味が変化していく“囲碁”というものを意識した造りにはなっていたが、囲碁を「点転」との名称に転じ、盤上競技と言いながら、盤の大きさに規定がないなどという無体な競技にしたうえで、いささか見苦しい作家的自意識に囚われた小説家を名乗る紙袋を持つ男(オカザキケント)を造形した脚本を第1回公演企画として取り上げることにしたのは、何ゆえだったのだろう。


 物語としての面白さという意味では、僕の感想はまさにタイトル通り「…」でしかないのだが、黒い靴の女(上村彩華)を配したものと白い靴下の男(吉良佳晃)を配したものとの二つのヴァージョンを構えていたことで対照される違いがなかなか興味深い公演になっていたところが面白かった。先に観た“黒い靴の女”版だと、紙袋を持つ男と何も持たない女(柴千優)という「点転」側の人物、言うなれば作家側の拘りのほうに重きが置かれ、後から観た“白い靴下の男”版だと、最後に窓辺から外を眺めていた二人の非「点転」側の人物の姿が示すように、言うなれば読者ないしは観客の側に重きを置いた作劇になっていた気がする。僕の好みは断然、“白い靴下の男”版だ。火葬場の控室にきちんと扉を開けて入ってきていた黒い靴の女と違って、独り靴も履いていない靴下姿で客席側から現れた白い靴下の男が、小説家の漏らす取るに足らない不満とか、考えを変えて露にしていた慢心とかを一喝すべく、彼とは旧知の間柄だったらしい故人となった女性があの世から遣わした者のように思えたからだ。


 十七年前に故人と別れ、地元を立ち去った小説家にそのとき何があったのかは明かされないが、おそらく二人は昵懇の間柄だったのだろう。男が小説世界のなかで創造したものに惹かれ認め、実際に現実世界のなかで女が展開し始めたことに離別の原因があったような気がする。その核心は、男の器の小ささだったのではなかろうか。そもそも十七年前の時点で、既に十冊を超えるだけの著作を刊行している小説家だとは思えないような文句と強欲を“何も持たない女”にぶちまけるようなセコイ男なのだ。もっとも、白い靴下の男や黒い靴の女の読んでいた『転がる点』ではなくて、窓の外を見ている女(山田紫織)の読んでいた『弔』に書かれていたものが本作「…」だったりするのであれば、話は少々異なってくるのだが、流石にそれはアンフェアというものだ。


 どうにも残念だったのは、紙袋を持つ男が、どう観たって十七年前に既に十数冊の作品を上梓している小説家には見えないことだった。演出プランとしての設定年齢は何歳だったのだろう。少なくとも中高年には至っていないといけないように思うが、どうもそういう意識で演じているようには映って来なかった。それなりに相応の老けメイクを施していないと、現実感に乏しい物語世界の不思議感の際立ちが削がれてしまって出鱈目感のようなものが立ち上がってきかねない気がした。こういう作品なればこそ、大事なことのように思う。











  ヤマ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/ 

  (『間借り人の映画日誌』)

http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/Live_bibouroku.html

  (『ヤマさんのライブ備忘録』)





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2018年07月31日

「緑のテーブル2017」プレスリリース第3弾[2018.9.5-6開催]


アーツカレンダー 様


 


平素より大変お世話になっております。




「緑のテーブル2017」東京公演に際し、振付の岡登志子と特別出演の大野慶人にインタビューを行いました。

また岡登志子による実演映像も特別掲載!ぜひご覧ください。






ニュース・トピック======================

1. 振付・岡登志子インタビュー


2. 特別出演・大野慶人インタビュー


3. 公演基本情報

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1. 振付・岡登志子インタビュー

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Toshiko Oka



Q1. フォルクヴァング芸術大学でジャン・セブロンらより学んだ身体訓練技法(メソッド)はどのようなものですか。


身体の構造や重力や呼吸を体系立てて構築されています。身体の内部と外側の空間を自覚し、身体を造形的に捉えることができます。と同時に、身体の使い方によって感覚が変化していくことや力の緊張や緩和の中で動きが生まれてくることで、多様な感覚を実感します。踊る為の身体づくりだけではなく、身体を使って表現することは何かを問いかける為のものだと思います。



>> 岡登志子によるメソッド実演映像 https://vimeo.com/282425617

 (限定公開、閲覧パスワード:thegreentable2017)

 ※こちらの映像URLとパスワードに関しましては、SNS等での公開や転送などをお控えいただきますようお願い申し上げます






Q2. 「緑のテーブル2017」には、舞踏家大野慶人さんが出演します。舞踏とご自身のダンスの関係をどのようにとらえていますか。

「人はなぜ踊るのか」が自分のダンスの大きなテーマですが、内面から動く大野慶人さんの踊りは、その問いかけに示唆を与えてくれます。様式は違っても踊りの中にある根源的な部分が繋がっているように思います。かたちのない踊り、固定化しない自分の踊りを続けていく上で、内面に向けて深く掘り下げて生まれてきた舞踏に学ぶことは、自分のダンスを探求するために必要だと考えています。

 

Q3. 反戦バレエとも呼ばれた「緑のテーブル」が今持ちうる意味はなんでしょうか。

「死の舞踏」をテーマに生まれた作品が、反戦バレエと呼ばれたようになったことは、時代の必然であったと思います。今の時代にどのように受け止められるかは、現代を生きる私達自身の生き方に関わることだと思う。その中で、今回の上演が時代を超えて変わらないものに向き合う機会になってほしいと願っている。また、身体表現のあり様が変化している中で、「踊りの根源とは何か」を問いかける意味があると思います。

 




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2. 特別出演・大野慶人インタビュー

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Yoshito Ohno 

Q1. 大野一雄は、江口隆哉・宮操子両氏より伝え聞いたクルト・ヨースの「緑のテーブル」について、度々稽古場で語っていたそうですが、大野一雄と「緑のテーブル」について、何か思い出があればお聞かせください。


大野一雄が江口先生のところでダンスを学びはじめた頃に召集令状が来て、戦地に行くことになった。1938年の8月、僕が生まれてまだ一ヶ月のことです。それから足かけ9年間、大野一雄は中国、ニューギニアで過酷な体験をした。大野一雄はヨースの「緑のテーブル」を、勿論見ていませんよ。でも、江口先生、宮先生から話しを聞いたのでしょう。あとは、写真くらいでしょう。大野一雄が何を語っていたかは僕も覚えていないけど、「緑のテーブル」というと目を輝かせていたね。なにかとても強い印象を自分の中に作り上げていた。それは自分の戦争体験とヨースの作品を重ね合わせていたのだろうと思う。

 

Q2. 慶人さん演じる「風」は、ヨースの原作にはない、「緑のテーブル2017」を象徴する役柄です。「風」はどのような役柄なのでしょうか。

太平洋戦争の起きた時、僕は4歳。終戦を迎える7歳まで戦争を体験した。そういう、風、だね。自然の中を吹く風も風だけど、時代の中を吹く風、「時の風」だと思う。だから、形ではない、体験なんですね。「風」は「ふう」という読み方もある。「風体」とか。形を表すのではないが、形に表れてくる。「風」とは、いつも生活のどこかあって、芯のある存在を示す役だと思っている。

 

Q3. 反戦バレエとも呼ばれた「緑のテーブル」が今持ちうる意味はなんでしょうか。


戦争がおこる可能性を、人間社会はいつも持っている。その時に、芸術の世界でこういう戦争に反対したダンスがあるということは、貴重なことだ。しかし、「反戦バレエ」という言い方がヨースにとって必要だったわけでもない。時間の経過と状況の変化の中で、「緑のテーブル」は自分自身を貫く、強度をもった作品だということ。そのことが大切だ。作品は一つの生命体のようなもので、そういう意味では、どういう形であれ、その生命を受け継いでいくことが本質的なことだと思う。






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3. 公演基本情報

岡登志子振付「緑のテーブル2017」(2017年神戸初演)

http://www.dance-archive.net/jp/news/news_12.html

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 [日時]2018年9月5日(水) 20:00開演


        9月6日(木) 20:00開演  (※上演時間:約60分)


 


[会場]ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター


 


[料金]前売 一般 3,000円 | 学生 2,500円 | 団体割引(5名) 12,000円


    当日 一般・学生とも 3,500円


 


    チケットカンフェティ



    Tel: 0120-240-540(通話料無料・平日のみ10:00〜18:00)


    ※発券手数料はダンスアーカイヴ構想が負担します。


 


[キャスト/スタッフ]


 振  付:岡登志子  


 美  術:廣中薫


 出  演:垣尾優、桑野聖子、糸瀬公二、文山絵真、佐藤健大郎、山井絵里奈、


      村田圭介、佐伯春樺、奥響子、岡登志子、大野一雄舞踏研究所研究生


 特別出演:大野慶人


 音楽協力:田村ゆう子


 


 主  催:NPO法人ダンスアーカイヴ構想


 共  催:有限会社かんた


 特別協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター


 協  力:大野一雄舞踏研究所、アンサンブル・ゾネ


 助  成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)


 


 


本件についてのお問い合せ、写真等のご請求は下記にご連絡ください。


何卒よろしくお願い申し上げます。



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NPO法人ダンスアーカイヴ構想(担当:溝端)

http://www.dance-archive.net

Email : press@dance-archive.net

Facebook : @DanceArchiveNetwork

Twitter : @dance_archive

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※今後ダンスアーカイヴ構想からのプレス配信がご不要な方は、本メールにそのままご返信ください。
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2018年07月29日

【演劇祭KOCHI 2018】









会場:藁工蛸蔵


'18. 6. 3. 劇団まんまる【徳島】 第4回公演『吃音ヒーロー』

'18. 6.10. カラクリシアター 『エデンの月』

'18. 6.17. TRY-ANGLE act.28 『ライフレッスン』

'18. 6.24. パッチワークス第5回本公演 4都市ツァー【愛媛】『「∩」積集合』

'18. 6.30. 立本夏山ひとり芝居【東京】 『智恵子抄』

'18. 7. 7. 劇団シャカ力 『ギラギラ薬局』

'18. 7. 8. アフターエンカイ




 今年の演劇祭KOCHIもまた県外からの参加劇団が3つあったものの、ラリー参加公演数は6と半減してしまった。連年参加も昨年から2団体減って3団体となり、シャカ力、TRY-ANGLE、劇団まんまる【徳島】となってしまった。事務局団体を担っているシアターホリックが演劇祭参加から外れた事情には劇団員不足もあったようだ。また、かつては公演参加劇団に義務づけられていたように思うPPT(ポスト・パフォーマンス・トーク)をプログラムに構えている劇団がシャカ力と徳島からのまんまるだけになってしまっているのは、とても残念だ。PPTやアフターエンカイを盛り立てていくことこそが、地道ながらも観劇ファンを育て広げることになるように思うのだが、何年か前にアフターエンカイが劇団交流のほうにシフトしたことでの得失の感じられるものになっていたような気がした。





 演劇祭開幕公演は、県外から三年連続で参加している徳島の劇団まんまるが初の長編劇に挑んだという『吃音ヒーロー』だ。

 笑いや幸福感を得ると体が衰弱し死に至るというアベコベ病を娘オルカ(東條優紀)が患ったことによって、領主ドルフ(鵜戸昌実)が芸術や笑いに禁制を掛けてしまったワイトリーユという町を、吃音の劇作家キツオ(小川真弘)と演出家ニナオ(大木茂実)率いる旅芸人が訪ねる設定になっていたが、そんな統制などなくても言いたいことをきちんと言えなくて口籠らずにいられなくなる世の中が近づきつつあるということを意識しているような気がした。そのことに対しては、オルカを慮って(近ごろ流行の言葉で言うなら“ソンタク”であろうが)笑いが封じ込められることを、当のオルカは決して求めておらず、むしろ死に近づこうとも笑いと幸福感のほうを求めていたことが明示されていた点が気に入った。

 だが、PPTで聴いた話からは、作者の丸山裕介【サーディン】は、そういう社会的な潮流のようなことよりは、もっと普遍的な弱者の声としてキツオの吃音をイメージしているようだった。そのほうが穏当なのかもしれない。そういうパーソナルな部分に向ける視座からすれば、確かに小川真弘が語っていたように、生きていてこその人の命なのだから、オルカに芝居を観られてしまったことを悔いるキツオの心情というのもあり得るなと思った。

 でも僕は若い時分から、やはり「人はパンのみにて生くる者に非ず」と考えるほうだし、還暦も過ぎるともっと身近な問題として寝たきりだけの生活で生き延びたくはないとの思いが強くなっている。人の死生観はさまざまあって然るべしだと思うけれども、僕は、幸福な生が得られぬのならば、惨めな生よりも幸福な死のほうが望ましく感じるので、オルカの最期を肯定的に捉えたいと思うし、本作の設定からすれば、まさに然るべき結末だったように思う。あえて吃音の劇作家を設けていることに対して、社会的な潮流に対する意識を読み取ったものだから、余計に僕にとっては、そこは“必然”とも言える部分になってしまう気がする。

 妙に可笑しかったのは、イールを演じた藤本康平のモミモミ,クリクリ,スリスリの手付きとそれを目にして如何にも嫌そうに憤っていたオルカを演じた東條優紀の表情だった。第3回公演『出航!まんまる丸! in 高知』の『ニシン』で見覚えのある股間から長く伸びた逸物ウマも劇団まんまる印みたいで可笑しかった。また、おしなべて皆、声と発声がいいように思う。叫びがちゃんと叫びになっていて耳に障らないことに感心した。レティシアを演じた清水宏香は麻生久美子に声が似ているように思った。  




 カラクリシアターによる『エデンの月』では、貴志(おっかん)の言っていた“ひと夏の恋”の思い出ひとつできないことと、美月(YU☆KI)が見舞われていた記憶の喪失はあっても身体に深く刻み込まれた生の痕跡を得ていること、劇タイトルが示すようにアダムのあばら骨から作られたイヴのごとき存在として星野大地(かりらり)が二十年ものあいだ囚われ続けている美月への執心の、いずれが人にとっての幸いなのだろうなどと思いながら、お気に入りの映画『コキーユ 貝殻』( http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/2000j/04.htm
)['98]を思い出した。

 いささか腑に落ちなかったのは、太陽の光を見ることができないからの夜のプールでの事故があり美月の記憶が喪失したように思うのだが、記憶のメタファーとしてのあばら骨をDr.梅内(からくり敬三)によって抜き取られたことで「うさぎ病」という記憶喪失のメタファーに見舞われ、あばら骨の適合移植が必要になっているという美月の事情との不整合だった。だが、星野大地もまたDr.梅内のもとを逃走した者として語られていたようでもあり、さすれば、Dr.梅内というのは創造主たる神のメタファーなのかということにもなる。だとすれば、どこか映画『神様メール』(
http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/2017/27.htm )['15]にも通じるニュアンスを帯びてくるような気がする。

 しかし、作者(谷山圭一郎)としてはそういった宗教的な関心はあまりなかったのではなかろうか。それよりも“最後の怪優”を看板とする役者のために、前作『路地裏のメモリー』でのDr.パピーに相当するキャラクター造形が必要だったような気がする。それにしても、芝居というものは面白く、また難しいものだ。『コキーユ 貝殻』を想わせる「十六歳の時の恋とその思い出」を主題とみるならば、本作のDr.梅内や、掏れないものは何もない神業スリ師の梅子(まるみ)の存在は、物語的に必要ないのだが、これは一体何者なのだと観客の視線を惹きつけ、その意味するところに観客の思いを引き寄せる仕掛けとして物語を牽引するうえでは、その怪優ぶり怪演ぶりが思いのほか有効に作用しているように感じた。少なくとも同じ手法を映画で講じても、よほどの芸達者が担わなければ、観る側を納得させられないような気がする。

 また、最後の喪服での葬送と思しき演出からは、束の間取り戻した記憶の共有により三十六歳で心中したと思しき、美月と大地なのだが、YU☆KIの演じる美月に三十六歳は無理としか思えないのに、その醸し出すある種の透明感が十六歳以降、世間に出ることもないサナトリウム暮らしをしたことでの世間擦れのなさとして、違和感をもたらさないどころか役柄に嵌っているように感じられたことが興味深かった。これもまた、舞台なればこそのことのような気がする。




 TRY-ANGLEの演目にいかにも相応しく、二匹の兎の名がアリスとテレスになっていた『ライフレッスン』は、開幕前の舞台を観て、役者の入退出は客席側から行うのかと思ったほどにぎちっと舞台装置が組み込まれていた閉塞イメージからすると、少年(三上綾佳)の父親(領木隆行)以外の人物は全員、引き籠りになっている少年の心中に立ち現われてきた者ばかりだったということなのだろう。とりわけ重要なのは、少女(山本優依)の存在なのだが、後段のライフレッスンの模様からしてもリアルの訪問は一度もなかったのだろう。

 また、大学紛争当時のものの引用と思しき台詞があったり、少年の父親が息子の恋愛対象の理想イメージとして微かな笑窪のかわいい“檀ふみ”などと言ったりする一方で、最後に携帯型のビデオカメラによる撮影場面が登場することから、いったいいつの時代の作品なのだろうと訝りつつ、小学生の引き籠りやLGBTを扱った題材の現在性に瞠目させられるようなところがあった。

 少年が主人公だが作者は女性だし、もしかすると檀ふみの件は、女の子らしくないなどと言われていたのかもしれない作者がかつて父親から言われた実体験に基づくものではないかなどと想像して帰宅後に検索してみたら、奇しくも還暦を迎えたばかりの僕と同じ生年だった。それなら、大いに得心がいく。作品は、'90年代のはじめのほうのもののようだ。ホームビデオも既に普及し小型化していたように思う。さすれば、モチーフの先進性にはかなりのものがあると改めて感心した。

 しかし、そのこと以上に響いてきたのは、当日配布のリーフレットのあらすじに記載されていた「大事な人が消えていく度に、大事な物が消えていく度に学んだ、生きていくためのライフレッスン」との記述で、あの些か面倒臭さが強すぎる父親の元を去って行った母親(登場しない)や亡くなった愛犬(墓標のみ登場)に対する喪失感が少年にあったにしても、リーフレットの制作に名前がクレジットされている前田澄子さんが先月に満26歳の若さで亡くなっていることを知っている身には、そのことを抜きには観られない作品でもあった。

 本作の11歳になったばかりの少年が、人の状況は十年ごとに変わっていくとして、二十歳の自分、三十歳の自分、…六十歳の自分、その後の自分を夢想するという形で、未だ生きていない時間を少女とともに演じるライフレッスンを観ながら、非常に複雑な思いに駆られた。この舞台を演じ作っていた劇団の仲間たちの心中にはいかばかりのものがあったことだろう。




 松山の劇団パッチワークスの企画による4都市公演での高知の演目は、ティッシュの会【大阪】による『にぎる』、World Wide Works作品『風習』のシアターホリックによる上演【高知】、島根県雲南市の劇団ハタチ族による『10万年トランク』、そして、パッチワークスによるタイトル不詳作だったわけだが、その積集合に当たる部分は何なのだろうと振り返ってみると、スタイルはそれぞれ大きく異なっていたけれども、いかにも若者らしい“生への問い掛け”があるように感じた。

 最も面白く観たのは最後に置かれたパッチワークスの演目だったように思うが、それでも、4作品120分余を観て、もっとも印象深く残るのが中島みゆきの♪ファイト!!♪の言葉だったりするのはどうよと思わぬでもなかった。ただ、パッチワークス主宰の村山公一が演劇とは何か、ということに関して、舞台と役者と観客があれば成立するものとの言葉を引用して、ステージ前に観客の象徴に見立てた空の椅子を置いたことで、これまた如何にも定義のしにくいフーゾクなるものが何だろうということに対し、客とフーゾク嬢と風呂なりベッドなりの場があれば成立するものとして示しているようにも思えたことがちょっと面白かった。




 東京から初参加した立本夏山のひとり芝居は公演チラシが喚起していた野性的イメージとはまるで異なる精神性の高いステージで、大いに意表を突かれた。若い時分に手にした『高村光太郎詩集』(彌生書房)が今も書棚にあるけれども、ナルシスト的イメージを強く持つようになった高村に対する僕の関心は最早あまり高くなく『智恵子抄』にしても、十四年前に観た同名映画['67]に感じた美化された純愛物語の印象が強かったのだが、その映画のような作劇とは全く違っていて、高村光太郎の詩そのものをダンスをしながら読み上げていく作品だった。

 踊りながらの詠唱ではない朗読というのは、動きがあるぶん却って難しいのではないかと思うが、言葉が命とも言える詩の言葉をいささかも乱すことなく、明瞭に聴かせる技量と身体づくりは大したものだと感じた。立本夏山はまた声質がいいので、より引き立つように感じた。

 ポスト・パフォーマンス・トークでの話によれば、レモンを添えてステージ中央部に置かれた像は、立本自身のオーダーによるもので、イメージプランも彼自身が出したもののようだが、どことなくロダンの『ベーゼ』を抽象化した風情を漂わせていて、とても似合っているように感じた。

 緑の光、桃色の光でときどきに映し出されていた人型の動きは何だったのだろう。緑が光太郎で桃色が智恵子だったのだろうか。あまりピンとこなかったけれども、僕が生まれる二年前に逝去している明治生まれの詩人の作品を現代に蘇らせるうえで、ダンスという手法だけでなくテクノロジーの部分を盛り込むことの意味というのは、何となく分からないでもない。なかなか意欲的で、興味深い公演だったように思う。しかし、チラシのほうの野趣だけは、どうにも不可解だった。




 何事によらず自然体が好きで、高校の卒業アルバムのクラス標語に上杉鷹山の名言として知られる「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」をもじって「成れば成る 成らねば成らぬ 何事も 成るも成らぬも 事の成行き 〜自然流〜」などという不埒なもじり歌を掲載していた僕は、クスリもサプリもダイエットも嫌いだから、ギラギラ薬局の処方する“107歳までギラギラしながら生きる”クスリなどにはまるで心惹かれないのだが、主要メンバーが四十路に入っているとは思えないシャカ力の舞台のキレのいい身のこなしにはかねてより大いに魅せられている。今回もそのあたりは健在でなかなかのものだと思った。なかでもAI阿野田由紀のピッチングには感心した。

 そんなシャカ力でも、年齢ネタを正面に据える歳にはなっているのだなと、むしろ青年の心に目を向けているように感じられた前回ラリー公演の『シャカロック』に比して、歳相応の問題意識を作品化しているような気がしたが、作者が行正忠義から井上琢己に変わっても、ストーリーで物語ろうとせずにイメージ力で語ろうとするシャカ力の創作姿勢に変わりはない。

 驚いたのは、劇中で語られていた「2007年以降に生まれた日本人の50%以上が、107歳まで生きる可能性がある」というものが、実際に公表されている説だとの井上のPPTでの話だった。チラシにあった釈迦像からも、てっきり百八つの煩悩との関係のなかで創作されたものだろうと思っていた。奇しくも客席からの質問にそれと同じ意図からのものがあって、井上が回答したものだが、その答えにはすっかり意表を突かれた。











  ヤマ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/ 

 (『間借り人の映画日誌』)

http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/Live_bibouroku.html

 (『ヤマさんのライブ備忘録』)





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2018年07月28日

2018年9月8(土)〜12(水)移動テント劇団どくんご『誓いはスカーレット』東京公演開催!

2018年9月8(土)〜12(水)移動テント劇団どくんご『誓いはスカーレット』東京公演開催!

鹿児島の奥地に拠点を置きながら、移動テント小屋で全国縦断ツアーを行っている「劇団どくんご」。ツアー30周年目を迎える2018年は、九州から北海道まで全国32箇所、78ステージを予定。毎回満員! 今年は、念願叶って東京にもやってきます。

劇団どくんご公演 第32番
誓いはスカーレット

出演|五月うか、2B、石田みや、泰山咲美、クヌギタナオヒト 
構成・演出|どいの  *前夜祭、日替わりゲスト有!

日時|9月8(土)、9(日)、11(火)、12(水)19:30開演(開場30分前)
場所|葛西臨海公園展望広場 特設W犬小屋Wテント劇場(葛西臨海公演駅徒歩10分)
料金|前売・予約3,000円/当日3,500円/中高生1,500円/小学生500円
予約・問合せ|
どくんご東京実行委員会(嚮心塾内) 
Tel:03-3334-0481  Mail:kyoushinjuku@apost.plala.or.jp

*公演情報の詳細は、下記をご覧ください。
http://www.dokungo.com

【劇団どくんごの演劇の特徴】  by 五月うか(劇団どくんご)

劇団どくんごは、野外・テント演劇の持つ可能性と魅力を探求し、より多くの方にその楽しさを知っていただきたいと、テント公演全国ツアーを始めて30年になります。冬にツアーの準備と稽古をして、春から11月の終わりまで全国を回ります。
どくんごの演劇は、従来の演劇の枠を超え、ストーリーに頼らない、見て・きいて・外気を感じて、五感で楽しむ「体感型エンターテイメント」として、全国で演劇に馴染みのなかった幅広い年齢層の皆様に好評を得ております。
公演地によって、小学生のお子さん連れのお客さんの多いところや、中学校の先生方が受け入れで客席の半分が中学生といった公演地もあり、ストーリー内容に縛られずに、俳優の掛け合いのリズムや、歌やダンスといった生の舞台ならではの身体感・躍動感を楽しんでいただけるよう工夫しています。
楽しみや娯楽のたくさんある世の中ではありますが、各世代や趣味の合う人に小さく分かれて楽しむことの多い時代だと感じております。100人入れば満員の、小さい仮設劇場に、趣味も世代も違ういろいろなお客さんが膝を並べて、それぞれに楽しむ。たまたま通りかかった人も舞台の向こうから観ている、といった、野外の村祭りのような雰囲気が貴重だと感想をいただいております。ぜひお知り合いお誘いあわせて、楽しんでいただきたいと思います。

【公演について】

どくんごの公演には、具体的なストーリーはありません。目の前にいる俳優の声、身体によって、即興を含めたライブ感を最大限に生かす作風。生の楽器演奏やテントの外に広がる風景や音とも相まって、幅広い年齢層の方が、それぞれの視点で楽しんでいます。 めまぐるしく変わる「背景幕」、終わったあとの「交流会」も風物詩です。

【劇団どくんご】 

1983年、埼玉大学・衛生短期大学演劇研究会を母体として発足。小劇場・ギャラリー・喫茶店・学校・街頭・野外等で公演を行う他、1988年からテント劇場による全国ツアーを開始。2009年、拠点を鹿児島に移し、長期全国ツアーを開始。 
2009年『ただちに犬 Deluxe』全国38箇所、66ステージ/2010年『ただちに犬 Bitter』全国36箇所、71ステージ/2011年『A Vital Sign−ただちに犬』全国40箇所、82ステージ/2012年『太陽がいっぱい』全国42箇所、80ステージ/2013年『君の名は』全国38箇所、70ステージ/2014年『OUF!』全国38箇所、73ステージ/2016年『愛より速く』全国37箇所、87ステージ/2017年『愛より速く2号』『愛より速くFINAL』全国37箇所、68ステージ
http://www.dokungo.com
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